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快挙! 5Gを活用したトラックの隊列走行実験に関する論文が、学会の論文賞と最優秀論文賞を同時受賞

快挙! 5Gを活用したトラックの隊列走行実験に関する論文が、学会の論文賞と最優秀論文賞を同時受賞

5Gを活用した、トラックの隊列走行の実証実験に関する論文「Field Trial on 5G Low Latency Radio Communication System Towards Application to Truck Platooning」(「トラック隊列走行への適用に向けた5G超低遅延通信による隊列走行 に関する屋外フィールド試験」)を執筆した、ソフトバンクの技術戦略統括 先端技術開発本部の三上学および吉野仁の両氏が、一般社団法人 電子情報通信学会の 令和元年度 第76回論文賞ならびに令和元年度 第2回電子情報通信学会 最優秀論文賞を同時に受賞しました。

コラム

電子情報通信学会は、1917年に設立された、電子・情報・通信の三分野を取り扱っている研究者団体。約3万5,000名を擁する会員規模は工学系では国内最大級。電子工学および情報通信の学問、技術および関連事業の振興に寄与することを目的に、講演会、討論会、講習会および見学会などの開催を行っている。

なお、最優秀論文賞は2018年度からの名称であり、これまで米澤ファウンダーズ・メダル受賞記念特別賞(1982年度~1993年度)、猪瀬賞(1994年度~2006年度)および 喜安善市賞(2007年度~2017年度)と呼ばれていた。

5Gの超高信頼・低遅延通信の能力を世界に先駆けて検証

快挙! 5Gを活用したトラックの隊列走行実験に関する論文が、学会の論文賞と最優秀論文賞を同時受賞

2019年2月に新東名高速道路で行った、5Gトラック隊列走行の実証実験

学術団体が発行する査読つき論文誌に関する最優秀論文賞の受賞は、ソフトバンクとしては初の快挙です。

論文は、複数のトラック車両が車両通信を用いた電子連結による「トラックの隊列走行」(先頭車両が有人運転で、後続車両が自動運転で先頭車両を追従する)をテーマにしたもので、トラックの隊列走行に5Gの新たな無線方式(5G-NR)の無線伝送技術を活用することを想定して実施した、実証実験(2017年から2018年までに実施した実験)をまとめています。

  • 5G-New Radio:5Gの新たな無線方式

実証実験は、ソフトバンクが総務省から受託した「5G総合実証試験」の案件の一つで、物流業界の課題であるドライバー不足や高齢化への対応、輸送効率や安全性の向上などの解決手段の一つとして期待されている、トラックの隊列走行の実現を目的に、車両の遠隔監視や遠隔操作を5Gで実現することを目指した先駆的な取り組みです。

  • 「高速移動時において無線区間1ms、End-to-Endで10msの低遅延通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討」

ソフトバンクは、今回の受賞論文に記載した内容をさらに発展させ、安定した隊列の形成・維持を可能にすることを目指して、高速道路で走行中の3台のトラック車両間で、位置情報や速度情報などの操作制御メッセージをリアルタイムに共有する実験も、実施しました 。

また、5Gシステムの性能評価では、無線区間で1ms(1,000分の1秒)以下かつネットワークのEnd to Endで、10ms以下の低遅延通信を実現。従来の4G LTEと比べると、到達時間を約50ms前後短縮できることを確認しました。

  • トラックに搭載されている通信端末からデータサーバーまで

時速約90km/hで走行しているトラックと基地局間の無線区間で、1ms(1,000分の1秒)以下の遅延を達成

ソフトバンク初の快挙! 前例のない試みに挑戦した苦労の全てが、最高の結果に結実

最優優秀論文賞の表彰盾を前に、論文賞の表彰状と表彰盾を手にする吉野さん(左)と三上さん(右)

今回の結果は、あらゆる産業への5Gの応用が世界的に強く期待されている中、ソフトバンクがトラック隊列走行という応用事例へ具体的に踏み込んで実証実験を行っている先駆性と、実運用に即した実験評価に対する高い信頼性が認められることになりました。

この論文を共同で執筆した三上さんと吉野さんは、大学教授でさえ取るのが難しい論文賞と最優秀論文賞の同時受賞に「世界初の5Gの超高信頼・超低遅延通信によるトラック隊列走行実験の価値を学会にも追認していただき、大変うれしく思うと同時に非常に驚いています」と率直な感想を述べました。

三上 学(みかみ・まなぶ)

2000年 日本テレコム株式会社(現ソフトバンク株式会社) 情報通信研究所に配属後、無線通信技術、移動通信システムの研究開発に従事。現在、ソフトバンク株式会社 技術戦略統括 先端技術開発本部所属。
2008年 東北大学大学院工学研究科博士後期課程を修了し博士号(工学)を取得。IEEE会員

吉野 仁(よしの・ひとし)

株式会社NTTドコモ ワイヤレス研究所を経て、2009年ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)に入社。移動通信システムの研究に従事し、現在、ソフトバンク株式会社 技術戦略統括 先端技術開発本部所属。1994年度電子情報通信学会 学術奨励賞、論文賞。2003年日本ITU協会国際活動奨励賞、2008年功績賞。2008年CrownCom 2008 Best Paper Award。
2003年東京工業大学にて 博士号(工学)を取得。IEEE会員

コラム

電子情報通信学会には、国内外から年間あたり数千件におよぶ多数の論文投稿がありますが、論文賞は、専門家による査読を通過し、電子情報通信学会論文誌(合計8誌)に掲載発表された論文の中で、電子工学および情報通信に関する学問技術の発展に貢献する、特に優秀と認められた論文に対して与えられるものです。

同学会には「基礎・境界」「通信」「エレクトロニクス」「情報・システム」の4つの分野のソサイエティがあり、各ソサイエティから3編ずつ計12編が選出されます。さらに最優秀論文賞は、上記12編の論文賞受賞論文の中から、独創性や産業発展上の寄与度の観点で最も優れていると認められた1編だけが選ばれ、その著者に対し贈呈されます。

両氏は、所属する先端技術開発本部で、新しいサービスに結びつく無線伝送技術の研究・開発に長く携わってきており、2017年から、論文の対象となった5Gを活用した車両通信の実証実験に携わっています。多忙な業務の傍ら取り組んだ論文執筆は、実証実験の計画・実施期間を含めると完成まで約1年半かかったそうですが、両氏は執筆自体よりも実証実験での苦労が印象に残っているとのこと。

三上さんは「この実験は、限られた時間の中で信頼性の高い実験データ結果を確実に得るために、日々取得した実験データを解析し、その妥当性を平行して確認する作業をしながらも、別の実験評価をきちんと出すことが大変だった」と述べて、制約の大きい中で実証するためのプレッシャーとともに、体力的にも厳しい屋外のフィールド実験について振り返りました。

吉野さんは「自動車テストコースでのトラック走行に必要な関係各省庁からの許可を取るために、交渉や説明などの調整に時間と工数をかけた。これまでやったことのない取り組みを理解してもらうのに非常に苦労した」とコメント。「実験報告書の作成で終わるのではなく、自分たちが取り組んできたことを査読のある論文にまとめて投稿し発表することは、成果の質をアピールするために第三者に客観的に評価してもらえる機会を得るという意味で、とても重要なことだった」と、論文執筆の意義を語りました。

両氏は、この論文の成果を含めて3年間におよんだ総務省の総合実証試験で実施した実験の成果をベースに、5Gの特性のひとつである超高信頼・超低遅延通信「URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)」の商用化に向けて、今後も引き続き、実験・開発に取り組んでいくと述べました。

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(掲載日:2020年7月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部